太陽光を停電時も安定供給、「蓄電+水素」で
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3710520030102018000000/
東北大学と前川製作所は蓄電装置と水素システムを組み合わせることで、太陽光電力を安定供給することに成功したと、2018年10月25日、発表した。
両社は、仙台市茂庭浄水場で、太陽光発電(出力20kW)に電力貯蔵システムと水素貯蔵システムを組み合わせた「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を構築した。これを使い、自然災害による長期停電を想定した72時間(3日間)の連続運転に成功した。
変動する太陽光発電の出力や負荷消費電力に対し、電力貯蔵装置と水素貯蔵システムの入出力制御により、高品質な電力を長時間安定供給できることを実証した。
東日本大震災では約4日間停電し、仙台市の主要な浄水場では機能維持に大きな労力が費やされた。ディーゼル発電機は災害時の燃料輸送や確保が困難で、あらかじめ大容量タンクに備蓄しておくと経年変化で動作不良につながる恐れがある。一方、太陽光などの再エネは需給変動を正確に制御するのに即応性・大容量性・耐久性を兼ね備えたエネルギー貯蔵装置が不可欠で、すべての要求に応えるには複数のエネルギー貯蔵装置を組み合わせる必要がある。
今回、大容量のエネルギー貯蔵とエネルギー需給の不規則変動の補償を両立することを目的に、電力貯蔵と水素貯蔵を組み合わせたシステムを考案した。大容量のエネルギー貯蔵には、エネルギー密度の高い水素吸蔵合金または液化水素タンクを採用。需給変動は長周期変動分と短周期変動分に分解し、長周期変動分を水素貯蔵システム(水電解装置と燃料電池)で、短周期変動分を電力貯蔵装置(電気二重層キャパシタ)で補償する。
DC BUSと水素BUSを設け、長周期変動分を補償する水電解装置入力と燃料電池出力は電力制御(アクティブ制御)、短周期変動分を補償する電気二重層キャパシタは電圧制御(パッシブ制御)を行う。両システムのエネルギー貯蔵量を逐次測定し、常時の変動補償制御と並行して、それぞれの目標範囲に収まるようにエネルギー貯蔵量を制御する。
太陽光パネルや電力系統からエネルギーを貯蔵するため輸送による燃料調達が不要になる。また、水素で保管するため燃料の経年劣化がなく動作不良が起こりにくい。通常時も運用可能で非常時の運転切替が容易という。
再エネ出力や負荷消費電力の大きな変動に対しても安定的に供給でき、非常時に太陽光発電を最大限に活用できる利点もある。また、通常時も再エネを活用できるため、費用対効果に優れるといった特徴もあるという。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/非常用電源機能を有する再生可能エネルギー出力変動補償用電力・水素複合エネルギー貯蔵システムの研究開発」の一環で、日本ケミコン、神鋼環境ソリューション、北芝電機と共同実施した。事業期間は14~19年度。